東京農工大学大学院の兼橋真二助教、荻野賢司教授、下村武史教授は、
廃棄バイオマスであるカシューナッツの殻から得られる天然油より、
バイオベースポリマーを開発した。
このポリマーは、材料形成時に環境や人体に有害なホルムアルデヒドや
重金属触媒などの化合物を使用しない。さらに、室温で塗料、フィルム
などへの無溶剤形成が可能で、耐熱性・柔軟性がある。
カシューオイル製品で達成が困難であった光学的無色透明化および物性の
経時変化の抑制に成功している。
■再生可能な非可食バイオマスの利用
地球温暖化や化石燃料の枯渇などの環境問題を受け、持続可能社会を
実現するために、低炭素社会やバイオマスとの共存を目指すようになった。
中でも量に限りのある化石資源に依存しない、カーボンニュートラル
(炭素循環量が中立であること)かつ再生可能なバイオマスの有効利用が
期待されており、非可食のバイオマスはなおさら注目の的である。
■カシューオイルの光重合
今回の研究では、カシューナッツのうち非可食であるナッツの殻から
得られる「カシューオイル」に着目している。これを光重合し、室温で
形成可能なバイオベースポリマーを開発した。
このポリマーは摂氏350度まで熱的に安定で、柔軟性にも富んでいる。
また、これまでのカシュー製品は無色透明化が難しく、物性の継時変化が
大きいという実用的課題があったが、これらの解決にも成功した。
■今後の展開
この度のバイオベースポリマーは、通常利用されない廃棄バイオマスで
あるカシューナッツの殻を使用したものであった。
そしてホルムアルデヒドや重金属触媒、それに有機溶剤を使用していない。
さらに室温で材料形成可能で透明、柔軟、耐熱、速乾であると大変機能的である。
そのため、これまでに使用されてこなかった様々な分野での開発や
新規材料開発への展開が期待される。東京農工大学大学院は、未利用
バイオマスを豊富に有する新興国において、新規バイオマス事業の開発に
よる技術支援・経済支援も展開するとしている。